まずはこちらの画像。ホワイトバランスをオートにして折り鶴を撮った画像を二つ並べています。
(スマホでこのページをご覧の場合は、左右に並んだ画像が上下になりますので適宜読み替えてください。)

この写真は同じ折り鶴を映したものです。別に目の錯覚の実験をしているわけではなく、写真として同じ被写体が違う色として写ってしまっています。
ホワイトバランスがオートになっている場合、センサーが受け取った光から、それぞれの場所でどのくらい色が違うのかは判断できますが、色の基準になる値は撮影した情報から判断することになります。判断の具体的な方法は、大雑把に言うと「一つの画像にどの色もまんべんなく含まれているだろう」ということを前提に、画像上の点の色の平均値はニュートラルな色、灰色なんだろうと判断します。
なぜ基準値を予め決めないのかというと、センサーが受信する(対象を反射した)光の色は、その場の光(光源)の色に影響されるからです。
撮影対象の色について、
撮影場所の光の色でセンサーの値が違う。
↓
撮影した情報で判断するほうが良い。
となるのでオートホワイトバランスなるものが存在するのですが、その判断が撮影する対象によって狂わされる可能性が出てきてしまったわけです。
画像上に薄い緑、中くらいの緑、濃い緑しかなかったら、薄いグレー、中くらいのグレー、濃いグレーだと解釈されてしまうわけです。
結果として、このようなことが起こります。左はカメラが判断したホワイトバランスの画像、右はホワイトバランスを昼光に設定して実際の色に近づけた結果の画像です。


写真以外のものに例えてみます。絶対音感を持たない人に”レ”と”ソ”の音を聞かせたら、どっちが高いかは判断できても、それが何の音階なのかはわからないですよね。でも、「これがドの音です」と伝えて”ド”の音を聞かせてから次に”レ”を鳴らしたら、ちゃんと”レ”と判断できます。基準の音が決まるからです。その時、「これがドの音です」と伝えて”ミ”の音を聞かせたら、ほかの音に間違った答えをしますよね。
最初のツルの画像も、背景が黒のほうはほぼ本来の色でツルが再現されていますが、背景に色紙を置いた画像では、かなり基準値の判断がずれています。
では、どうやって対応するのか。結論はオートに頼らないということになります。
対策1:撮影時に適切なホワイトバランスの設定をする。
一般的には「昼光」「曇天」「日陰」「蛍光灯」など、光源の種類を指定してホワイトバランスを設定できるようになっているので、その場に合ったものを選ぶようになります。より細かな設定として数値で指定することもできます。
デジタル一眼(機種によるかもしれませんが)なら撮影する環境で、基準となるニュートラルグレーの被写体を撮影して、その情報をもとにホワイトバランスを決定することもできます。色がシビアな撮影であればこの方法が理想でしょうが、いつもこれをやるわけにはいかないでしょう。
対策2:撮影後に補正する。
センサーが読み取った光の情報から画像ファイルを作る作業を「現像」と呼びます。カメラのメモリーカードに保存される画像ファイルはこの「現像」作業をカメラが自動的に行った結果なわけです。デジタル一眼(と一部のコンパクトカメラ)は、画像ファイルとは別にセンサーが読み取ったデータをそのまま保存することができます。このデータがRAWデータです。このRAWデータから現像ソフトを使って、手動で画像ファイルを作ることができます。その時に適切なホワイトバランスに変えてやればいいのです。
じっくりとできる画像を見ながら、自分が見た時の色に合うようにホワイトバランスを設定することができます。また、カメラの設定にあるような光源の種類による指定も可能です。基準のグレーの被写体を指定して適切な設定をさせることもできます。(現像ソフトの機能と操作は、各ソフトによって異なります。)
最初の写真の背景に使った色紙ですが、この背景自体も色がずれています。左はホワイトバランスをオートにして背景に使った紙を撮影した画像で、基準がずれているので黒い机も黒く写っていません。右はグレーの紙と一緒に撮影しておき、現像ソフトでホワイトバランスを修正した画像です。

私は方法2でホワイトバランスを設定します。撮影スタジオでなければ光源の状態は常に変化していて設定が煩わしいのと、そんなことを心配せずに構図や現像時に対応できない設定に集中したいからです。
RAWデータはファイルサイズが大きく、現像作業は面倒ということで、カメラでは画像ファイルしか保存しない人も多いと思います。勿論それも一つの選択ですが、きれいに残したい対象を撮影する時だけでもRAWデータからの現像をお勧めします。
